お疲れ様です。たぬきです~
7月2日付で、株式会社日本商品清算機構(JCCH)のホームページにアップされている「SPAN取扱要領」が変更されています。
主な改正点は
1)PSRの算出におけるカバー率を現行の95%→99%に引き上げ
2) PSRの算出におけるカバー期間を現行の過去8週と24週→24週のみ
3) PSRの算出における基準を変動幅→変動率に変更
の3つです。
変更による影響は…「今の計算方法より証拠金は上がる」。
その理由は、PSRのそもそもの計算方法を復習すれば、自ずと見えてきそうです。
PSRは、「1日の動きで未収金が発生しない額」というイメージでよいと思います。
つまり(前日比の絶対値×倍率)の金額。最低限これだけが口座にあれば未収金は発生しないわけですから、証拠金として確保しておこうというわけです。
しかし、前日比は毎営業日ごと異なるので、(前日比の絶対値×倍率)の額も異なります。よって、最も値動きの大きい日の(前日比×倍率)の金額を証拠金として設定すれば、大は小を兼ねるの理屈で、すべての営業日において不足が発生しないことになります。
しかし、「最も値動きの大きい日」は、比べ方によっても異なります。5営業日間と3ヶ月間とでは、後者の方が、より大きな値動きに遭遇する可能性は高いですよね?
また、すべての営業日において不足が発生しないとすれば、「10年に一度」などと言われる、とてつもない値動きの日も計算に含めることになります。例えば、前日比-409円だった4月15日にも不足が発生しないようにするならば、証拠金額は1枚当たり409,000円とかなり大きな額になります。
この当たりのさじ加減が証拠金額を大きく変えることは、おわかりいただけますよね。
顧みて、上記1)2)。
カバー率99%とは、データ期間が100営業日なら、うち99日は不足が発生しないということです。
100営業日あれば、うち1日くらいは、規格外の動きをする日があるかもしれません。異常値を除き、平時には概ね不足発生とはならない設定として、世界的に用いられているのが、このカバー率99%です。
たぬきは、JCCHはSPAN導入時に99%カバー、97%カバー等で試算した結果があまりにも従前の証拠金額と乖離していたため、95%を採用したように記憶しています。そろそろグローバルスタンダードに近づけようというのは、もっともなことであるかもしれません。
2)は、1)の変更に伴う措置です。従前の制度では、カバー率95%、期間を8週間と24週間とでそれぞれPSRを試算し、高い方の値をPSRとして採用するルールでした。しかし、カバー率99%の場合、8週(約40営業日)の99%は39.6日。カバーできない営業日が1を割り込んだことから、24週のみについて試算を行い、うち119日不足が発生しない金額ということになりました。
なお、3)は読んで字のごとく。上記例では簡単に(前日比×倍率)でご説明しておりますが正式には、まず、当日帳入値-前日帳入値の絶対値、つまり「変動幅」を求めます。従来は、この変動幅をPSRの計算に用いていたのですが、変更後は、「変動幅」を前日帳入値で割った「変動率」を算出し、その変動率に当日の帳入値をかけた値をもってPSRを計算します。同じ前日比500円でも値位置により異なる影響の大きさを加味させるためです。
以上が変更の概要です。基準日は8月23日で、9月上期に設定される証拠金から影響を受けます。
ただし、カバー率99%については、一気に移行することへの懸念も寄せられており、一度97%とする段階的引き上げ案もあるとか。進展がありましたら報告させていただきたいと思っております。
