お疲れ様です。たぬきです~
先週13日は、急落した日経平均とは逆に、気温が各地で上昇、中部から近畿地方にかけては、真夏日や、今年初めての猛暑日を記録した地点もあったそうです。週末の東京も、土曜の夜はまとまった雨が降りましたが、強い日差しと何より湿度が高く、たぬきのように暑さが苦手な向きには、なかなか厳しい二日間でした。
梅雨半ばの今からこの暑さとなると、今年も電力不足が懸念されます。そうでなくとも、省エネは地球規模での問題であり、しかるべき対策が求められるところ。ふと、先月東京都知事が提案した、『「東京標準時間」導入プラン』を思い出しました。
サマータイムのように夏だけ時計の針を進めるのではなく、基準の時間である標準時を2時間前倒しする。つまり、現在9時に寄り付く株やコモディティ市場が、今の7時にオープンするイメージです。ポイントは、金融市場における東京のマーケット価値を高めること。
提言の通りなら、我々金融業界人は直接的な恩恵を受けることになります。東京の市場価値が高まれば、外国籍の金融会社が東京に支店を設け、現地ブローカーと契約する機会も格段に増えるでしょう。大口の投資家が増え、流動性が高まれば、個人投資家の活動も活発になりそうです。
提唱された"利点"は、マーケットの活性化だけにとどまりません。
暗くなる前に退社するので使用エネルギーの削減効果も期待でき、さらには、家族団らんや趣味、仕事後の一杯の時間が長くとれる。社会福祉にも、健康維持にも、スポーツ振興にも、そして消費経済に与える効果をとっても、どれもいいことづくめである、という内容であったように記憶しています。
しかし、そんなに、うまくいきますかね?
標準時の変更に係る法手続きなどは、その道の方が考えてくれると思います。
一気に2時間の影響が大き過ぎるならば、暫定的に1時間ずつ変化させるなど、準備次第で何とでもなるでしょう。
しかし、民間の会社員が、早く会社に来たところで、早く帰ることができますか?2時間早く来れば、単純に、会社にいる時間が2時間長くなるだけではありませんか?
残念ながら、労働時間をきっちりと管理されているのは、公共団体や、上場企業、組合が機能している会社などに限られます。今でさえ、一日12時間働いている会社員が14時間会社にいても、劇的な労働力の増加は見込めないでしょう。会社の収益にもつながらず、本人は疲労困憊、家族と会話する時間も気力もなく、勤務中も集中力が持たない…なんていう負のスパイラルが今にも見えそうです。いくらブローカーの収益機会が広がっても、ミスが頻発するようでは、マーケットの信頼性にも影響します。
また、我々ブローカーのタイムスケジュールですと、だいたい、朝7時半には皆会社に到着します。2時間早まれば、自宅を出るのは3時か4時台…そう、まだ暗いうえに、冬季は夜明け前の、一日で最も冷え込む時間帯。電気を使わずにはいられません。省エネ効果はどこまで期待できるのか疑問です。
マーケットの活性に効果的という言葉は魅力的ですが、現場レベルで考えると効果は懐疑的にならざるを得ません。むしろ、マーケットを壊しかねない危険性さえ潜んでいるように思います。
机上のルールに沿うのではなく、実情に即した判断を慎重に行っていただきたいと切に願います。
